ティアドロップ

守るよ





「どーぞ」


「あ、ありがとう…ございます」




あの修羅場を抜け、私は史哉先輩の家にいた。


コト、と目の前に麦茶の入ったコップを置かれ、小さく会釈する。








「…さっきはごめんね」


「…え…?」


「ひーちゃんの好きな人って、有利…俺の妹の彼氏なんでしょ?」


「……」




そうだったみたいと。


知らなかったと。



その事実を言えないのは、何故だろう。






史哉先輩を責めてしまうとでも?


責めてしまって何になるの?


傷つくの?


後悔するの?



私はそんなに慈悲のある人間だっけ?






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