ティアドロップ
その場がシンッと静まり返る。
光の視線も冷やかしで私に向けていたものじゃなく、何か得体のしれない者を見る目で――マツ先輩を見ていた。
「あ…? 誰だよ…俺に何の用?」
「あぁ、君に用は無いんだよね。俺はひーちゃんが泣きそうな顔で……あーいや、心底嫌そうな顔で君になんか言われてたから、助けてあげようと思ってきただけ」
私はただその場を見ているだけで、何を言うことも、何を思うことも無かった。
まさに、頭の中が真っ白という表現がピッタリで。
その状況を撮るビデオみたいに、じっと動かずに。