運命を恨む愛しの炎



主は続いてページを捲る。


中世期の囚人たちは、監獄の中を五世紀近く、またはそれ以上を無意味に過ごし、精神は闇に食い尽くされ立ち上がる気力も無い。


どれもが。


どれもが殺人窃盗と今で判断すれば数年の刑で許される犯罪ばかり。


毎年冊数は増えるばかりとは言えども、中世期から比べれば増える速度は急速に落ちている。


書物に閉じ込めるか否かは、個人<獄吏>の判断だという。


殺人窃盗と明解な理由がなくても、個人的な恨みがあれば閉じ込めたってお咎めは無い。


そもそも獄吏義務を負わされた『人たらぬ』彼らを咎められる人など、この世にはいないからだ。



「可哀想に。
今に生まれていれば500年も『生きなくて済んだ』だろう」


「…………」



嘲笑う我が主の声色は恐ろしく、また美しい。


私は『可哀想な』人間は大嫌いだ。



でも可哀想な彼だけは、この命をもって敬愛する。


それは彼が賢者であるから。



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