運命を恨む愛しの炎
可哀想な人。
かつて、その身に受けた不条理な運命に抵抗した結果がこれ<獄吏>だ。
それもなんの意味もない、ルールもない、ただ『罪人を投獄せよ』だなんて曖昧な義務を。
我が主は他人を哀れみ、見下すことでしか娯楽を見いだせない人でなし。
他人の不幸は嬉しく、こうして罪人を見るもまた彼の娯楽に過ぎず、どこまで彼はこんなことを続ければいいのだろう。
「運命とは実に曖昧で理不尽なルールで出来ている、故に賛否両論、美味しい運命を頂いた奴等には愛すべき『幸福』か」
あなたは否を言う人だろうに。
運命さえあなたは娯楽〈嘲笑う物〉にする。
いい加減気づいてはくれまいか。
あなたが賢者である限り見ている方がどれだけ痛々しいか。
「可哀想だなんて、主にも言えることでしょう」
「………」
失言とは思わない。
方向性に違いはあれど、やはり秘書官たる自分は主の『幸せ』を願う者であり、『人であってほしい』と願う。
「どうしてあなたは大罪とわかっていながら女神<彼女>に逆らい、その末路を甘んじて引き受けたのでしょう」
運命を覆せた賢者であったから、末路だって、変えられた筈なんだ。