運命を恨む愛しの炎
「人ならばそうしたろうね」
主は微笑む。
艶やかな口元で、老若男女を魅了するであろう、その白い指先で漆黒の髪を掻き回しながら。
「人だったでしょう、主、あなたは」
かつて確かに人だった筈なんだ。
その辺の青年と同じように、学業に励み、恋をしたり、または誰かの傷みを思ったりして普通に過ごせる『人』であった筈なんだ。
だから『人でなくなる』前だったら、自分の幸せを求めた筈だったんだ。
「俺は最初から人ではなかった」
「賢者であったんでしょう。」
「賢者は人ではないよ」
「ならば」
ならば今のあなたはなんですか。
私は何に支えているのでしょう。
そうやって、ふとしたことに怯え、下らないことに笑い、可哀想を可哀想と自覚できるあなたをどうして神は『人ではない』と言いますか。
どうして彼に罰を与えますか。
不必要とは思いませんか。