運命を恨む愛しの炎



「レイン」


差しのべられた手を取れば、私は腕の中へ引き込まれる。


愛情とは別意味の抱擁、そもそも私には愛情などなかろう。



「すまないな、心配をかけたらしい」


「………」


「アルも、長年馬鹿な奴とは思っていたが、お前も案外その口だな」





触れれば温かい。


心配をわかってくれる。


これのどこが人では無いと言うか、私は、慕うべきこの賢者を罰する神を心から憎んでみせよう。



私が賢者ほどの人であったのなら間違いなくあなたの幸せのために尽力できるというのに、ただ彼の娯楽を助力するだけしか能のない自分が歯痒くて、ひどく彼を遠く感じる。


近くにいるのに。


こうやって抱き締めてもくれるのに。


神とはいかに、愚かなことか。



「あなたは人です、間違いなく、ただ少し残酷なだけなんだ」


残酷なのは罪ですか。


ああでも彼より残酷な人間などこの世には腐るほどいるでしょうに。


良心の欠片も失った奴等より、彼はずっと優しく温かいのに。



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