思いが瞬を駆け抜けて~時代を越えた物語~
その後、昌幸様にはこっ酷く怒られたけれど、その対価として家康が話した事を話して許してもらった。
さすがに“意思”の事と果心居士の事は言えなかったけど……。
言ったことは2つ。
家康は“徳川家康”ではないということ。そして、家康は私と同じ未来人であったこと。
家康が未来人と知った昌幸様は少し眉をひそめた。
それも当然の事。
未来をある程度知っている上で行動している…してくるということだから。
「あの狸め…本当に厄介なやつだ。それに、いくら家康が“家康”でないとしても何の根拠も無しに騒ぎ立てられないからのぉ。難しいところよ。」
「そうですね。いくら私が未来を知ってると言ってもその先を読んで行動されたら大変です。」
「ふむ……して、真琴。」
昌幸様が少し難しい顔をして私を呼ぶ。
なんだろ……?
「はい?」
「少し教えて欲しいのだが…近いうちに次は何が起こる?」
「はっ…!そうですね!」
そうだ!私はこの先どうなるか知ってるんだから、なんで昌幸様とかに伝えなかったんだろう⁈
私のバカ!!
滝川一益の寄力になってからだいぶ時は過ぎた。
その後のイベントとしては……
_____本能寺の変
天下統一を目の前に、織田信長が明智光秀に討たれたあの事変。
この後真田家の運命が大きく動き始める……!
「昌幸様、6月の初めに織田が討たれます。真田家はここで独立する機会です!そのことを念頭に置いて行動をして下さい!」
昌幸様は驚きのあまり立ち上がった。
「あの織田が討たれるだと…⁈誰に討たれるというのだ?」
「それは…なんとも言えないんです。」
「何…?」
「私のいた未来でもその事変に関しては真相が明らかではないんです。」
そう。
本能寺の変は誰が信長を討ったのか諸説ある。明智が討ったのが定説だけど、秀吉が討ったという説もあるくらいで。
だからこそ家康も動くかもしれない…!
もっと早く気付くべきだった!
「未来でもそんな事があるのだな…しかし、そうと分かれば行動はしやすい!感謝するぞ真琴!!」
「そんな、私は何にもできてません。」
立ち上がったままの昌幸様は私にニカッと笑いかけると、そのまま部屋を後にした。
「真琴…父上は恐ろしい方かもしれん。」
「え?」
今まで隣で黙って聞いていた幸村がぽつんと言った。
ただ笑って出て行かれただけだけど…
「あの顔をしてる時はもう考えがあって動き始めている顔。父上は真に切れ者だ。」
えぇ⁈
あの短時間の間に既に先の行動を⁈
__表裏比興の者
私はただただ驚くばかりだった。