思いが瞬を駆け抜けて~時代を越えた物語~
〜side家康〜
遂に来る。
あの大きな事変が__本能寺の変が。
俺はこの時を逃してはならない。
そのためにここまで手を尽くしてきたのだから。
「家康よ…抜かりはないかのぉ?」
「大事ない。安心してくれていい。」
「ふぉふぉっ…この15年間お主は変わらんのぉ…。」
黒い外套に身を包んだ老人が俺の背後で笑っている。
他でもない__果心居士だ。
「むしろこの機会を逃したら、それこそ修正が利かなくなる。」
「そうじゃのぅ……。」
時代の管理者である果心居士に導かれて歴史修正を重ねて15年。
時代が進むにつれて〝意思〟の歴史を改変しようとする力は強くなっていた。
ここまで修正するのにも多くの時間を掛けすぎた……。
本来なら1582年に起こるはずの本能寺の変。
だが。
この時代は既に数十年遅れて時代が進んでいるのだ。
この事にあの少女__森川真琴は気付いていないのだろう。
だが、俺は時代の管理者に選ばれし者。
なんとしても正しい歴史へ。
__関ヶ原の合戦を起こす。
そして〝意思〟を生み出す元凶となる戦国最後の戦いを。
__大坂の陣を。
俺と果心居士の計画では本来の歴史と多少異なってしまう事になるが……
最終的には元通りに修正されるという。
鍵となるのは〝意思〟を断ち切れるかどうか。
断ち切れるかどうかは大坂の陣で決まる。
「では…頼んだぞ家康。」
「承知した。」
俺は〝徳川家康〟
時代の管理者に選ばれし者