思いが瞬を駆け抜けて~時代を越えた物語~
動き出す歴史
〜side幸村〜
小県に移ってから早一ヶ月。
俺にとっては小県は生まれ故郷。
砥石や岩櫃のようにお気に入りの場所は当然ある。
ただ、その中でも一番のお気に入りの場所だ。
城下の外れの川辺__今俺は佐助とそこにいる。
「源二郎〜こんなところでゆっくりしてていいの〜?」
佐助が木の枝から両脚でぶら下がりながら茶化す。
__真琴に会わなくていいのか?という事だ。
「……いいわけ無いだろ。」
俺は思いっきり不機嫌に答えた。
会いたくない訳がない。
やっと想いが通じた__その矢先だ。
忙しい毎日を送っていたせいで真琴には全くと言っていいほど会ってない。
今はようやく落ち着いてこうしているが、今更…真琴に会わせる顔がない。
「あー!もうもどかしいな!!全く会ってなかったのに突然会うのも会わせる顔がないとか思ってんだろ⁈」
「んな⁈…な、何を言う佐助!!」
「会う理由を作ればいいんだよ!ほらよっ」
__パシッ
佐助が投げてきた小さな箱。
その箱の中身は桜の飾りの付いた腕輪なる物。
安土城下で買った物だ。
「なぜこれを佐助が持ってる⁈」
「源二郎が文机に入れっぱなしなのは俺がお見通しだっつーの。」
気が利きくというのか…お節介というのか……。
「真琴はどこにいる?」
「沙江姉が連れて来るさ。」
「⁈」
あの姉弟め……!
ここに来る段階で既に仕組まれてたって訳か……!
俺は佐助をキッと見る。
俺の思ってることがお見通しなのかニヤニヤと笑っている。
「んじゃ、邪魔者はさっさと退散っ!てな!」
その場には葉が少し舞い、佐助の姿は見えない。
『沙江さ〜んもう少しですか〜?』
『ええ。もう少しよ。』
少し遠いところで声が聞こえる。