思いが瞬を駆け抜けて~時代を越えた物語~
私は気分転換に、と沙江さんと城下外へと出ていた。
「沙江さ〜んもう少しですか〜?」
「ええ。もう少しよ。」
なんでも松尾城周辺で一番お気に入りの場所だという。
とても楽しみだ。
そしてしばらく歩いて、旅人姿に身をやつした沙江さんが足を止める。
さすがにこんな昼間から沙江さんの忍装束は目立つよね…。
それにその容姿。
身長は高いし、胸も大きくてスタイル抜群。
何とも憎い!!!
チラリと自分の胸元に目をやる。
……なんともお粗末だ。
「………絶壁……。」
「真琴?何か言った?」
「い、いえ!そんな羨ましいなんて思ってませんから!」
「……??まあいいわ。ここが私の連れて行きたかった所よ。」
さっきまで林の中を歩いていたが、そこだけ視界が一気に開けた。
澄んだ水が流れ、小鳥のさえずりが聞こえる__
「わぁ……!綺麗です!!」
「よかった。私もここが好きなの。」
沙江さんがフッと軽く微笑む。
私は川まで駆け寄ってはしゃぐ。
……まるで小学生みたいに。
「川も冷たくて綺麗ですね!沙江さん…あれ?」
あまりに興奮しすぎて沙江さんがいなくなっている事に気付かなかった……!
私は少し周りをキョロキョロと見渡す。
沙江さんの姿は見えない__が。
十数メートル程先に見覚えのある姿が見えた。
その人物は少し顔をそらして頭を掻きながら近づいてくる。
予期せぬ人物が来た事により、私の頭は小パニックになった!
「ゆ、幸村?!なんでここに?!」
「……ここは俺のお気に入りの場所だ。少し休みを入れていただけだ。」
幸村は照れてるのか顔が少し赤い。
とかいう私もドキドキして目が合わせられない……。
「そ、そっか。今日は忙しくないの?」
「仕事はひと段落したからな。」
「「………。」」
何気無い会話のはずなのにお互い目を合わせられず、沈黙が続く。
今更だけど…これ沙江さんにハメられたよね⁈
幸村と私が会うように!!
私は幸村の方をチラリと見遣った。
口元を腕で隠して明らかに照れている幸村。
そんな姿をみて私は数日前の出来事を思い出していた。