思いが瞬を駆け抜けて~時代を越えた物語~
〜数日前〜
松尾城のとある縁側。
そこには私と佐助さんが恒例の手合わせ後の休憩中だった。
「いい汗かきました〜!いつも手合わせしていただいてありがとうございます。」
「真琴ちゃん覚えが早いから、俺もいい運動になるよ。」
「そう言ってもらえるとよかったです!」
私は手拭いで汗を拭い、佐助さんは装束の片方の腕を脱いでまったりとしていた。
「……真琴ちゃんさ、」
「はい。何でしょう?」
佐助さんの目線は遠く空を眺めている。
「幸村…いや、源二郎の事どう思ってるの?」
「えっ⁉︎……まぁ……その……」
あまりに唐突すぎる質問に私は小さなパニックに陥ってしまう。
「幸村の事はもちろん…す、好きです。」
うわわっ……なんかすごく恥ずかしい!!
佐助さんは何てことを言わせるの!?
そんな風に頭の中で一人でヒートアップしてると思いもよらない言葉が返ってきた。
「……それは主従としてか?」
「え……?」
「それは主従としてなのか?もしそうなら……」
佐助さんはそう言いかけ、いきなり私を縁側に押し倒した。
男子だし、忍だから力が強くて動けない……!!
「俺のものにならないか、真琴。」
佐助さんの眼は真っ直ぐで、視線を逸らすことは許されなかった。
「さ、佐助さん……⁈」
「どう?」
更に顔を近付けてくる。
佐助さんの表情は変わらない。
でも私が好きなのは__!
「……なーんてね!びっくりした?」
真剣な表情は一変していつもの佐助さんに戻る。
「ふぇ?!」
その豹変ぶりにみっともないような声を上げてしまった。
「いや〜俺、忍だからさ?女の子の1人や2人軽く落とせないと情報収集もままならない訳よ。」
「は、はぁ…。」
「で、源二郎一途な真琴ちゃんでも通用するかなぁって試してみたくてさ。ごめんごめん!」
「……それはいいんですが。さりげなく幸村の事でからかわないで下さい!」
私は佐助さんをポカポカと叩く。
佐助さんは腹を抱えて笑っている。
「あー面白い!…にしても源二郎は本当幸せ者だよなぁ。」
そう言って、優しい笑顔で私の頭をポンポンっと撫でる佐助さん。
「え?」
「こんなに可愛くて、優しくて、良い子に一途に好かれてるんだからさ。」
「幸村の事、男性として好きだなんて一言も言ってませんよ?」
「何を今更…。」
「うっ…。」
私は顔を真っ赤にする他ない。
「ってのに、源二郎ときたら…一発喝入れてやるか!楽しみにしてな、真琴ちゃん!」
「ど、どういう事ですか?あ、待ってくださいよ〜!!」
佐助さんの姿は一瞬で見当たらなくなってしまっていた。
……喝って??