思いが瞬を駆け抜けて~時代を越えた物語~
あれからお互いに無言のまま。
久々すぎて何を話していいのかわからない。
___ううん。
話したい事はたくさんあるはずなのに……言葉が出てこない。
だけど、心は正直で。
鼓動は速まるばかりで治まる気配すらない。
幸村に会えたことが嬉しくて__
やっと想いが通じて__
でもお互い不器用だから話せない。
とてももどかしい。
幸村が話せないなら私から…!
「あ、あのさ」 「あのだな」
「「…………。」」
似た者同士なのかな……。
「何?幸村からでいいよ。」
「別に俺は何にも……」
と言いかけて、照れてるのかそっぽを向く幸村。
その瞬間、何か光るものが物凄い速さで幸村の目線の先に飛んできた。
虫かな?
幸村の表情が固まってる様に見えるけど…そんなに虫嫌いだったっけ?
一旦はそっぽを向いた幸村だが、またすぐに私の方を向く。
「……ない事ないな、うん。」
「??」
首をかしげるしかない。
「そのだな…これをずっと渡そうと思っていた。」
そう言って袖からおもむろに木箱を取り出す。
その木箱には見覚えがあった。
あの安土の城下で。
「それって……」
「あれからだいぶ経ってしまってすまぬ。」
そう言って箱を開ける幸村。
そこにはあの桜のモチーフのブレスレットとネックレスがあった。
「私が可愛いって言ってたやつ…!」
「これをずっと真琴に渡したかったが…渡す時が無くてな。今になってしまった。」
そう言って、私の手を優しく取り、ブレスレットをはめてくれた。
幸村は自分でネックレスをつける。
「この首輪と対になってるらしい。」
桜の彫られた銀のプレートを左手で握りながら幸村は言った。
「これからまた会えぬ日が続くかもしれん。……だが、これで少しは寂しい思いを和らげたい。」
「……ありがとう。これで寂しくなんかないね。」
幸村のその言葉だけで十分だった。
私の事を常に考えてくれている。
その事がわかっただけで幸せだ。
気が付いたら涙が出ていた。
「ま、真琴⁈す、すまぬ……。」
「違うの、幸村。」
そう、違う。
この涙は悲しいからじゃ無くて。
「とても嬉しかったから……。」
「………おう。」
幸村の顔が近付いてきて。
気が付けば唇が重なっていた。
優しいキスだった。