思いが瞬を駆け抜けて~時代を越えた物語~
三章・宿命
*side海里*
くそっ……なんだこの頭痛……!
今まで体験したことの無いに痛みに俺は襲われていた。
頭の中を稲妻が駆け抜けていくような痛みだ。
あの真田の女の眼を見た瞬間だ……。
「……何なんだあの女……」
顔を見たのは一瞬だったが、鮮明に思い出される。
アイツは俺の名前を知っていた……。
いったい何者なのか……。
新府城から離れ、木々の上を駆けているうちにだいぶ頭痛は治まってきた。
この頭痛はあの女の力なのか……?
妙に頭につく痛みだったな……
おかげで忍務失敗じゃねーか。
これじゃ半蔵様の面目が立たねぇ……
「………もう少し甲斐にいてみるか。」
独り言。
話によれば、織田軍は1週間もしないうちに新府城に向けて軍を出すらしい。
その混乱に乗じて……
それが一番確実だな。
しばらくはこの辺で農民のふりでもしとくか。
「……今度は失敗しねー」
決意を言葉にして、俺は再び闇に消えた。
__優しく輝く三日月を雲が隠す……