思いが瞬を駆け抜けて~時代を越えた物語~
~甲斐の国・新府城~
昌幸様と私は新府城まで来ていた。
「大きな城………!」
外観などはまだ未完成な部分も多くあるが、とにかく大きな城だった。
「亡き信玄様の構築技術を取り込んである。守りは万全だ!」
「確かに……」
「躑躅ヶ崎は今の状況だと地理的にもよくないんでな、新府城を築いたのだが……」
昌幸様の眉間に皺が寄った。
それもそうだ。
昌幸様が城代(城普請の長)を務め、構想を重ねた城。
この城を棄てると言っているのだから、昌幸様の表情も納得だ。
「この城なら3年は籠ってられそうですね。」
「うむ。お館様も馬鹿ではない。それくらい分かっておるはずなのだがな。」
「………。」
「自信を失うということとは人をここまで変えるか……」
昌幸様の目には悲しみのようなものが感じられた。
「それよりも……説得についてなんだがな」
「はい。」
「先に儂が説得を試みる。それでお分かり頂けないなら真琴に説得してもらいたい。」
「承知しました!」
「うむ。………では行くか。」
打ち合わせを終え、私と昌幸様は新府城の城門をくぐった。