思いが瞬を駆け抜けて~時代を越えた物語~
___小山田信茂。
武田勝頼を裏切り武田家を滅ばせた、武田家重臣………。
この人だ………!
信茂をどうにかしないと武田家の運命は変わらない………!
「喜兵衛、この城の事で来たのだろう?」
「はい。……どうか、ここ新府城で織田との籠城戦をしてくださいませ。」
そんな私とは裏腹に、昌幸様は説得に入る。
「うむ……しかしだな……」
そこに信茂が入り込む。
「新府城は甲斐の中程。上杉に援軍を要請するにも遠く、喜兵衛の治める沼田城にも遠い……我らが不利かと。」
「そう。喜兵衛、信茂の言うことにも一理あるのだ。」
昌幸様の表情が一変する。
目は見開かれ、闘気が感じられる。
__まさに鬼の形相に近かった。
「昌幸様……?!」
「たわけがっ!信茂!この城は信玄公の教えを注ぎ込んだ堅固な城だ!落ちるはずがない!」
「何を。新府城はまだ未完成ではないか。」
「城の機能は充分果たせるわっ!」
昌幸様と信茂の討論が続く。
どちらも道理は外れていない。
しかし、今の現状を考えれば……
昌幸様のが正論であるはずなのだ。
「喜兵衛、信茂、二人とも止めよ。」
そこで勝頼様が仲裁に入る。
そして、私の方に真っ直ぐ視線を向けた。
「真琴とやら。お前の意見はどうなのだ?喜兵衛が連れてくるくらいだ、余程の策士なのだろう?」
___きた。
昌幸様はこれを狙ってたのか……