思いが瞬を駆け抜けて~時代を越えた物語~
そしてまた沈黙が訪れる。
勝頼様はなんでそこまで新府城での籠城を拒むんだろう……
勝頼様だって賢い方だからここでの籠城が最善だってわかるはずなに……
そこで昌幸様が口を開いた。
「お館様はそんなに信玄様がお嫌いか。」
「えっ………?」
私は昌幸様の発言に戸惑った。
信玄様がお嫌いか……?
勝頼様が新府城に籠城しない理由って…
その問いに勝頼様が答える。
「儂は信玄公は…義父上が嫌いな訳ではない。」
「では何故ですか⁈お館様!」
「義父上が偉大すぎるのだ…儂は武田信玄の力なしに生きられないのかと思われたくないのだ……」
「お館様、それは思い違いです。」
「喜兵衛、これは儂の意地じゃ。これだけは譲れぬ……」
「お館様………」
「それ故に信玄公の傑作の城…新府では籠城せぬ。」
そう断言した勝頼様には全くの迷いがなかった。
これではテコでも動かないだろう……。
でもこのままじゃダメだ。
最後に私が出来る事は
昌幸様の持つ支城、岩櫃城に来てもらえるように説得すること……。