思いが瞬を駆け抜けて~時代を越えた物語~
幸村は人払いをして陣幕の中にはわずかな重臣だけが残される。
私も何度か見かけたことのある方達だ。
「して…真琴さまは何用でこちらに?」
「昌幸様に伝令役を任せられまして。幸村を岩櫃城に呼び戻すように言われてきました。」
「なるほどな。いよいよ動くと言うわけか。」
幸村はニッと笑う。
昌幸様が不敵に笑うときの顔とそっくり!
さすが親子だ……
策略家の血が騒ぐのかな?
幸村は床几(小さな椅子のようなもの)から腰を上げる。
「すぐに岩櫃に戻る!この場の指揮は頼んだぞ!」
「承知いたしました!」
「真琴行くぞ!」
そう言って私の手を引いて陣幕を後にする。
「わわ⁈急に引っ張りすぎ⁈」
慌てて残る方達に頭を下げて引かれるままに私も陣幕を出る。
その先で足軽さんが細雪を率いて待機していた。
「ありがとうね。」
『いえ!とんでもありませぬ。』
二十歳ぐらいの足軽さんは少し照れているように見えた。
「…………。」
「幸村?」
今度は何と無く幸村がふてくされているように見えて声を掛ける。
「…俺だけに見せろよ……」
「ん?」
「なんでもない!ほら!」
ひょいっ と私をお姫様抱っこをして細雪に乗せる。
そして続けて私の後ろに座る幸村。
って、ええ⁈
まさか2人乗りですか⁈
「ゆ、幸村⁈自分の馬は⁈」
「いいんだよ!このまま行くぞ!」
手綱は幸村の手にあってそのまま岩櫃城に戻ることに。
でも。
幸村と2人きりになるのは久しぶりで。
__とても嬉しかった。