思いが瞬を駆け抜けて~時代を越えた物語~
〜said小山田 〜

喜兵衛も織田に降伏し、この戦は終わった。



お館様には申し訳ない事を私はした。

その代わりに私はお館様より預かりしこの岩殿とその民を必ず守る。

これが罪滅ぼしになるかはわからぬがな……。


「小山田殿、入られよ。」

「はっ。」


この日私は信長殿に安土城に呼び出され、今信長殿と面会の時を迎える。

おおよそ今後の領土の話であろう…。


「お前が小山田信茂か。」


やがて信長がやって来て上座に堂々と腰を下ろした。

これが魔王と恐れられる男……。

覇気が違う。


「はっ。此度は降伏を受け入れて下さりありがたき幸せ。」

「デアルカ。して……お前はなぜ主君である勝頼を裏切った?」



なんだと……⁈

裏切りの話を持ち掛けて来たのは織田ではないのか……⁈

これはまさか……


「何故だと問うておる。答えられぬのか?」

「いえ……、それは…岩殿の民を守る為でございます。」

「ほう……民をなあ?素晴らしい志だな。」

「はっ……。」


私は頭を下げるしかない。


私は気付くのが遅かった……。



これは狸の__徳川の罠であったと。




「儂が窮地に陥りそうになった時に同じ理由で裏切るのであろうな……。」

「決してそのようなことは…」

「もうよいわ!」


その言葉に反応した両脇に控えていた家臣が私の腕を掴みそのまま広間から引きずり出す。



喜兵衛。

お主は間違っていなかったのだな……。

生きよ、喜兵衛___



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