思いが瞬を駆け抜けて~時代を越えた物語~
〜安土城下〜
さすが信長の城下。
人が多く、すごい賑わっている。
やっぱり楽市の制度のおかげなんだろうな。
「安土はすごいな!真琴!」
馬をあずけ、私の隣で大通りを歩く幸村。
幸村の目は爛々と輝いている。
まるで幼い少年だ。
「ふふっ。」
「なんだよ、そんなにおかしいか?」
「だって…幸村子供みたいなんだもん。」
すると幸村はムッとした。
やっぱり子供っぽい。
そういうところが可愛らしい……!
「真琴は興奮しないのか?こんな賑やかな城下は初めてなんだぞ?」
そう言って安土城の方を向く幸村。
私も同じ方を向く。
「俺もいつか安土に負けぬ城下を造る。これは俺の一つの夢だ。」
幸村は私の方を見て微笑みながらそう語った。
「すごく素敵な夢だと思う。」
「その時は真琴も驚くような城下にするからな!」
「うん、楽しみにしてる。」
自然に微笑む私。
普段はあまり見ない一面の幸村。
頼もしさと純粋さを兼ね合わせた少年。
そんな幸村にやっぱり惹かれたんだなぁ。
そんなことを思ってる矢先、突然幸村は私の手を繋ぐ。
突然の出来事に焦ることしかできない。
「えっ⁈ゆ、幸村⁈」
幸村はニコッと笑って余裕そうだ。
「今日は俺の夢の第一歩だ!安土の視察ってところだな!行くぞ、真琴!」
幸村の白くてしっかりした手は私を離さなかった。