思いが瞬を駆け抜けて~時代を越えた物語~

〜安土城下〜

さすが信長の城下。

人が多く、すごい賑わっている。

やっぱり楽市の制度のおかげなんだろうな。


「安土はすごいな!真琴!」


馬をあずけ、私の隣で大通りを歩く幸村。

幸村の目は爛々と輝いている。

まるで幼い少年だ。


「ふふっ。」

「なんだよ、そんなにおかしいか?」

「だって…幸村子供みたいなんだもん。」


すると幸村はムッとした。

やっぱり子供っぽい。

そういうところが可愛らしい……!


「真琴は興奮しないのか?こんな賑やかな城下は初めてなんだぞ?」


そう言って安土城の方を向く幸村。

私も同じ方を向く。


「俺もいつか安土に負けぬ城下を造る。これは俺の一つの夢だ。」


幸村は私の方を見て微笑みながらそう語った。


「すごく素敵な夢だと思う。」

「その時は真琴も驚くような城下にするからな!」

「うん、楽しみにしてる。」


自然に微笑む私。

普段はあまり見ない一面の幸村。

頼もしさと純粋さを兼ね合わせた少年。

そんな幸村にやっぱり惹かれたんだなぁ。



そんなことを思ってる矢先、突然幸村は私の手を繋ぐ。

突然の出来事に焦ることしかできない。


「えっ⁈ゆ、幸村⁈」


幸村はニコッと笑って余裕そうだ。


「今日は俺の夢の第一歩だ!安土の視察ってところだな!行くぞ、真琴!」


幸村の白くてしっかりした手は私を離さなかった。






< 87 / 108 >

この作品をシェア

pagetop