思いが瞬を駆け抜けて~時代を越えた物語~

先に城門を目指す最中の事。


___ドンッ


誰かと肩が当たってしまった。

相手はバランスを崩して転んでしまう。


「わ!すみません!」

「あたた……。」


相手は外套を頭からすっぽり被った老人だ。

慌てて手を貸して手伝う。

私の腕に掴まって起き上がる老人。


「よっこいせ。すまぬなぁ…」

「いえ!こちらこそ…」


こっちも謝罪を述べる。

すると老人は私の腕をそのまま引寄せて耳元で驚くべきことを囁いてきた。




「…真田の未来より来られし娘よ。」





「……っ?!」


私は慌てて手を振り払い、距離を取る。


どういうこと……?!

なんでこの老人が私が未来人だって…

この事を知ってるのは織田方の者だけ。

__罠にはめられた……!


私の心を読まれてるのか話を続ける老人。


「儂は織田の者ではない、安心せぇ。遅れたのお、儂は果心居士……。」


笑って自己紹介する老人。

でも笑っているのがわかるのは口元だけ。

外套が邪魔して顔まで良く見えない。


「織田の者ではないのになぜ私の事を知ってるの?」


私はあくまで敵として尋ねる。


「儂は俗世を捨てた僧じゃ…敵意などないわ。」

「………。」


警戒は緩められない。

この果心居士という人の言ってることが全て正しいとは限らないから……。


「信じ無くてもよい、よい…儂はちと変わった爺でなぁ……。色々知っておるのだ。」

「何が言いたいんですか?」


私は厳しい顔付きを変えないまじれったいこの老人の言葉を待つ。

すると私の正体を知っていたこと以上に果心居士は衝撃的な事を告げた。



「お主の力では歴史を変えられぬぞ。」



頭を殴られたような衝撃が走る。


私の力では歴史を変えられない……?


「デタラメを言わないで!」

「デタラメでは無いわい…既にこの歴史は徳川家康によって大きく変えられておる。それ故お主が少し歴史を変えたところで家康の歴史に修正されてしまうのじゃ……。」


そう告げた果心居士には先程のふざけた様子は一つも無くて。

真実を伝えているのだと私はわかった。


でも……。

ますますわからないよ……。


徳川家康が絡んでるなんて___





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