思いが瞬を駆け抜けて~時代を越えた物語~
〜安土城城門前〜
「はっはっはー!待たせたな!幸村、真琴!」
安土城城門へ着くと同時に昌幸様が城の中から現れた。
「俺たちも今戻って来たところです。上機嫌ですね、父上?」
「ま、儂の手に掛かれば領土を守るくらいは楽勝だ!はっはっは!」
昌幸様はいつもの豪快な笑いとともに得意気な表情を浮かべている。
「じゃあ小県(砥石付近の地域)も沼田も安堵されたんですね!」
「いや、小県だけじゃ。ま、沼田が滝川殿の領土になり、滝川殿の寄力になるのは一杯喰わされたってところだがな。」
そういって少し眉をひそめる昌幸様だったけど__
よかった……小県と民だけでも守れて。
ここまでは一応、歴史通り。
いくら私が歴史を変えられなかったとは言え、他の人によって変えられていないとは言い切れない。
__果心居士が言っていた家康の様に。
こうやって本来通りに物事が進んでくれることも時には嬉しいものだ。
「さて、儂等は岩櫃に戻るとするかのぉ。」
「そうですね。皆さん待ってるでしょうし。」
私がそう言って昌幸様の顔を見ると、昌幸様はなんだがニヤニヤしている…。
「あ、あの。昌幸様?」
「お主ら安土を二人で楽しめた様だしのぉ……と、思うただけじゃ。」
二人同時に顔が赤くなるなるのがわかった。
よ、よく思い出したら……!
私、ゆゆゆゆ幸村とててて手を⁈
手を繋いでたよね⁈
わわわ⁈
あの時は嬉しいと思ったけど……!
さ、さすがに今思い出すと少し恥ずかしい……!
「ち、父上!からかわないで下さい!」
「ま、勧めたのは儂だからな!はっはっは!若いのぉ!二人は!」
そう豪快に笑って颯爽と馬に跨って鞭を振るう。
「あ!昌幸様!置いていかないで下さい〜!」
私は愛馬・細雪に、幸村も自分の愛馬である残月で昌幸様の後を追った。
___また珍道中が始まりそう……。