思いが瞬を駆け抜けて~時代を越えた物語~
四章・裏と表
あれから1ヶ月。
私達は織田軍の滝川一益の寄力として今までと同じように小県地域を治めている。
私達は滝川一益に上野の領土を明け渡すため岩櫃城を離れ、今は松尾城(小県郡真田本城)に移って生活していた。
松尾は馴染みのある信州上田地域だし、慣れるまでの苦労はなかったのが、ありがたい。
一益さんといえばあの日以来、昌幸様が気に入ったのか度々私達の所へやってくる。
案外フレンドリーで温厚な人だ。
やっぱり歴史書と実際はわからないものだな……って実感。
そんな私は最近、佐助さんに本格的に手合わせをしてもらい、腕を上げている。
薙刀はそこそこ扱えるようになった。
で、今はその手合わせの休憩中。
「真琴ちゃんあっという間に強くなるね〜?油断したら俺が討たれちゃうな!」
「そんなことありませんよ!私なんてまだまだです。」
「真琴ちゃんのそういう謙虚な所嫌いじゃないぜ!……ところでさ、幸村様と最近会った?」
「いえ…それが幸村忙しいみたいで。」
私も言ってて肩を落としたくなる。
幸村は昌幸様に呼ばれることが多くなって最近は全く会っていない。
仕方無い事だとは分かるのだけど……
それでもやっぱり寂しいもの。
「そんなに寂しい顔するなって!」
「そんな顔してませんよ⁈」
「真琴ちゃん、嘘つくの下手だね⁈」
そう言って困ったように笑う佐助さん。
沙江さんにも同じ事言われたけど……すぐには直らないよね。
「大丈夫だよ、すぐに会えるさ。」
「……はい。」
そこは素直に返事をする。
うだうだ考えても仕方ないしね。
「さて、続きを始めるか?」
「はい!お願いします!!」
そして私の薙刀と佐助さんの忍者刀が激しくぶつかる音が響く。
____これはとある松尾での1日。