思いが瞬を駆け抜けて~時代を越えた物語~

「今日はここまでね。お疲れ、真琴ちゃん!」

「はい!ふぅ〜…疲れた〜!」


佐助さんとの稽古が終わったのは午後3時頃。


ここ松尾城がある小県地域は信濃国の中でも温暖な気候の地域。

春……といっても稽古をしていて汗ばむような暖かさだった。


「今日は暖かいし、川で水浴びでもしてくればどう?」

「あ、それいいですね!」


佐助さんの提案に賛成!

この時代は自然が綺麗だから川もすごく綺麗なんだよね!


そんなことを思いながら薙刀を片付けようとした時、佐助さんが私の薙刀を掴む。


「じゃあ準備してきな?片付けは俺に任せとけ!」


そう言ってニカッといたずらっぽく笑っている。


「じゃあ…お言葉に甘えますね!」



佐助さんの厚意に甘えて私は水浴びの準備を整えて川へ向かった。



_____……



「う〜ん!気持ちいい♪」


川の心地よい冷たさに、稽古での汗を流す。


水浴びってこんなに気持ちいいものだったけ?

冷たい!って他に感じた事ないよ…!

美しい自然に感謝だね!


あまりの水の透明さに、後半は童心に帰って水遊びになっていた。

夢中になりすぎたのか、途中佐助さんの愛鳥のフクロウ・葛葉(くずは)が手紙をもってやって来た。


『真琴ちゃん、いつまで遊んでんの〜?戻っておいで?』


手紙にはそう書いてあった。


いつの間にそんなに時間が……。

すぐに戻らなきゃね!




そう思い急いで川から上がり、手拭いで水を拭っている時だった。




「初めまして、真田の未来から来た女。」

「___?!」



突然背後から声が聞こえる。


「こんなところで水遊びとは……呑気なもんだな?」


あの時と同じで、私は振り向かないでそのまま会話を続ける。


気配の無さ、この落ち着きようは

___おそらく、敵方の忍。



「訪ねてくるにはちょっと失礼なんじゃないですか?」

「そうかもしれないな……。まぁ、絶好の機会だったんでな。」

「……あなた一体誰なんですか?」

「俺は服部半蔵。」


名を名乗ると同時に半蔵は私の目の前に回って姿を現す。

黒の忍装束、長めの前髪で右側が隠れている。

___これが服部半蔵……



「今日は殺しに来たわけじゃない。」

「え………?」


半蔵の口から思わぬことが発せられて拍子を抜かれる。


「今日はあくまで提案だ。」


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