月夜の翡翠と貴方
そう言うと、女は時計を見た。
「そろそろ戻らなきゃ。じゃあお嬢ちゃんたち、バイバイ」
「あ、ありがとうございました…!」
「ありがとう!」
女は綺麗な笑みを浮かべると、早々に会計を済ませ、店を出て行った。
緊張がほぐれ、深いため息をつく。
…まさか、劇場の人間に会ってしまうとは…。
スジュナを見ると、パンを譲ってもらえて嬉しいのか、ニコニコと笑っている。
複雑な気分のままパンを買って、私達は店を出た。