月夜の翡翠と貴方
スジュナはぽかんとした顔で、私を見た。
「おねぇちゃんの、秘密?」
「そう。誰にも言わない?」
首を傾げながらも、スジュナは素直にこくん、と頷いた。
その様子に微笑むと、私は「あのね」と言って。
「私も、ルトに買われた奴隷なの」
見ると、スジュナは何を言っているのかわからない、という顔をしていた。
やがて、徐々に言葉の意味に気づいていき、目を見開く。
「………えっ!?うそ!本当に!?」
「本当に」
身を乗り出して迫ってくるスジュナに、思わず笑ってしまった。
スジュナは、純粋に戸惑っているようだった。
「じゃ、じゃあ…おにいちゃんは、おねえちゃんのご主人様なの?」
…ご主人、様。
その言葉が自然と出てきたということは、この子は過去の主人にそう呼ばされていたということだ。
こんな、幼い子供に。
そう考えると、やるせなさでいっぱいになる。
スジュナが奴隷だったということに、急に実感が湧いた。