月夜の翡翠と貴方
しかしこの若い店主は、価値観がまるで違った。
私がこの奴隷屋の奴隷となったのは、五人目の主人に捨てられ、ここへ売られた、六ヶ月ほど前からだ。
今までの奴隷屋とは全く違う食事量、優しい店主。
そして何より、今も目の前に広がる異様な光景。
奴隷である子供達が、店主であるエルガに懐いているのである。
この店に初めて来た頃は目を見張ったものだが、今では見慣れた光景だ。
それほどまでに、エルガは奴隷に優しい。
しかし、奴隷への食事量は多いが、エルガ自身の食事量も、普通の店主に比べると多かった。
つまりは、奴隷屋以外の別の稼ぎがあり、そこから出る金で生計をたてているということだ。