月夜の翡翠と貴方
要は、いつも通りの仏頂面でいれば良いのだ。
「ルト」
彼がこちらを向いた瞬間、小袋をずいっと差し出した。
「これ、ありがとう」
ルトはちら、とほんの一瞬私の顔を見た後、にっこりと笑って小袋を受け取った。
「ん。どーいたしまして」
そう言うと、ルトはサッと私に背を向ける。
彼は、復活した例のパンについて話しているラサバとスジュナのもとへ、夕食の話をしに行った。
「…………………」
…いつも通り、じゃないか。
私はもともと表情を作るのは得意だから、すんなりといつも通りに出来たと思う。
そしてルトも、普通だった。
それでいいはずなのに、何故か腑に落ちない。
私は、今日何度目かになる溜息をついた。
…なんだかもう、考えるのも面倒だ。
仕方なく、隣で話をしている三人の会話を眺めることにした。
「えーっ、またパパ行っちゃうの?」
「ごめんね、お昼休みにちょっと来ただけだから。またこの後、劇があるんだよ」
スジュナはぶー、と頬を膨らませる。