月夜の翡翠と貴方
ラサバはスジュナに、劇団の人間との関係、今の現状を話し、スジュナの事を話そうと思う、と告げた。
スジュナは最初こそきょとんとしていたが、なんとなく予想がついていたようで、すぐに話を飲み込んだ。
賢い子だ。
…というより、この子は察するのが上手いのだ。
特に、あまりよろしくない事情を察するのが。
約束の時間を決め、話を終えたら、ラサバは早足で去って行った。
劇場へ戻るはずの時間を、だいぶ過ぎてしてしまったらしい。
「…パパ、またお家で、あの人達に怒られるんだよ」
へらっとあっさり、そんな事を言ってのけるスジュナに、ルトと二人して笑ってしまった。
スジュナが劇団の人間を『あの人達』と呼ぶのは変わらない。
しかしスジュナのなかではきっと、劇団の人間は受け入れるべき人間だ、と判断しているのだろう。
「んじゃ、時間になるまで遊ぶかー」
ルトが声をかけると、スジュナは変わらぬ笑顔で、「うん!」と返事をしたのだった。