月夜の翡翠と貴方
ラサバとルトは、劇場の裏口へ向かう。
そして、扉の向こうへ消えて行った。
私は、ラサバに渡された裏口の合鍵をぎゅっと握りしめる。
……上手く、いきますように。
*
ラサバが劇団の人間を集め、話を始めてから二十分ほどが経った。
劇団員達は午後の公演で疲れきっているようだったが、ラサバの真剣な目を見て、大事な話であるとわかってくれたようだ。
しっかりと、話を聞いてくれている。
ソファに腰掛けた俺の横では、娘のために懸命に話をするラサバがいた。
俺は彼がうまく言えない部分を代わりに言うなどして、時折口を挟んでいるのだが。
…驚いた。
正直、ラサバならもっと、言葉を詰まらせてしまうかと思っていた。
しかし、隣の彼はしっかりと前を見据えて、堂々とした口調で話を進めている。
劇団の者たちも、普段と違うラサバの様子に驚いているようだった。