月夜の翡翠と貴方


「……大丈夫だよ。ラサバさんなら、きっとちゃんと話してくれる」

目を伏せたスジュナは、俯きがちに頷いた。


「………うん」


数時間前まで、太陽のように元気に笑っていた少女の姿が、今ではとても儚く見える。

不安に押しつぶされそうになっているのが、わかった。


「笑って、スジュナちゃん」


私は、スジュナの笑顔が好きだ。

スジュナの頬へ、手を添える。

少し驚いたあと、スジュナはその手に優しく触れた。

愛おしい太陽の笑顔で。


「……うん。ありがとう、おねえちゃん」


わずかに目の淵を潤ませたスジュナは、少し元気を取り戻したようだった。

「スジュナ、頑張るね」

「うん」

今、頑張っているのは、ラサバ。

そしてこのあと頑張るのは、スジュナ。

私もいい手助けができるといいな、と思った。





「奴隷となんか、一緒に住める訳ないでしょ!?」


...ジェイドとスジュナが来るまであと数分。


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