月夜の翡翠と貴方
まだ、話をしているのだろうか。
「…いかないの、おねえちゃん」
小声で、スジュナがこちらを見上げた。
「…………うん…………」
...どうにも、気が進まない。
そろ、とゆっくり階段の一段目に足をのせる。
しかし、待ちきれなくなったのか、スジュナが私の手から離れて階段を駆け上がった。
「……あっ………………」
待って、と言う間もなく、とたとたと小さな歩幅で階段を登り切る。
急いでスジュナを追いかけながら、少しずつ大きくなっていく女声に嫌な予感がしていた。
スジュナが、意を決しているのはわかる。
受け止めんとしているのも。
でも。
少しずつ、少しずつ聞こえてくる声。
高い声が、何かを叫んでいる。
明かりが漏れている、部屋が見える。