月夜の翡翠と貴方
そこで、黙っていたルトが口を開いた。
「……スジュナちゃんのこと、少しでも知ろうとは思わないんですか」
皆の視線が、彼に集まる。
ルトはあくまで冷静に、説得を試みていた。
「あなた方が、想像しているような子じゃないと思いますよ」
ルトの言葉に、少女は一層目をつり上げる。
「あなたは他人事だからいいじゃない!私達の身にもなってくださいよ!奴隷の何を知れって言うの!?」
スジュナが、微かに肩を震わせた。
「大体、奴隷なんて買うラサバ兄さんが悪いのよ!しかもそれを娘だなんて!」
ルトが悔しそうに顔を歪める。
私も、ハッとした。
先程階段を上がるときに聞こえてきた高い声は、この罵声だったのだ。
今気づいても、遅い。
悔しさで、いっぱいになる。
少女の怒声は、続いていた。
「汚い!奴隷なんて汚いわ!絶対一緒になんて住めない!」
今度こそスジュナの肩が、カタカタと震え始める。
それを見たラサバが、少女に必死の声で叫んだ。