月夜の翡翠と貴方
強い日差しに当てられ乾き切った土は、喜んで水を受け入れるように、よく吸った。
土を触ると、ちょうどよく湿っている。
ファナはその土を無造作に掴み、自分の頬へと当てた。
…少しでも、汚いと思われるように。
青年を落胆させるために。
そう思う少女の目は、何処か虚ろだった。
そんな自分に自覚している彼女は、ふと思っていた。
昨日、青年に髪を見られたとき。
あのときあんなにまで肩が震えたのは、自分でも驚いた。
きっと、エルガの店に長く居過ぎたからだ。
だから、こんなにも弱くなっているのだ。
エルガの優しさは、当たり前に受けられるものじゃない。
弱くなっては、いけないのだ。