月夜の翡翠と貴方
けれど、知って欲しかった。
何故だかそう思ってしまった私の唇は、すぅ、と小さく息を吸った。
...醜い、私の。
汚くて狡い、生き方。
「……生きるためなら、どんなことでもできる。……たとえ、身体を差し出すことだって、厭わない」
ルトの歩みが、止まった。
驚いた?
…さすがの彼でも、軽蔑するだろうか。
でも、でも。
「私は、そういう奴なの。汚れてるの。…ルトに、優しくしてもらう価値なんて、ない」
私は、奴隷なのだ。
ルトとは違う。
身分が、全く違う。
「人間らしく、扱われていいはずないの……」
もちろん、スジュナからあの言葉をもらうなんて、できない。
自嘲するように、微かに笑った。
うつむいたまま、一瞬だけ目を閉じる。
そしてもう一度開くと、ルトの足が見える。
……いつのまにか、ルトは私の目の前にいた。
私には、今ルトがどんな顔をしているのかわからない。
ルトが、少しだけ動いた。
反射的に、きつく目を閉じる。
...怖くなんか、ない。
別に、ここで捨てられたって構わない。