月夜の翡翠と貴方
青年は昨日と違う私の態度に、驚いているようだった。
しかし彼も、強い口調で繰り返す。
「………一度、見せてくれればそれでいい。君を買うとは言ってない」
「出来ません」
何度聞かれても、私の答えは同じだ。
こちらからすれば、見られれば買われるのだ。
もちろんそれには、知らないフリをするけれど。
「……そもそも貴方は、どのような人間を必要とされているのですか」
こんなふうに、わかり切っている問いを口にして。
彼は、「ん?」と言った後、あっけらかんと答えを口にした。
「『花のように、綺麗な女』」
…花の、ように?
あまりに漠然としている答えに、私は眉を寄せた。
青年は、に、と口の端を上げ目を細める。
「だから一度顔を見せてくれれば、それでいいんだよ」
「……もしも私が、貴方のご期待に添えない顔立ちで、だから顔をお見せしたくないとしたら、どうされるのですか」
私はご期待には添えられません、という意味を込めて。