月夜の翡翠と貴方
「…でもさすがに、ルトがなにしているのか知らないのは、おかしいわね」
「…………」
何も、言えない。
「…何故知らないの?」
「……………教えてもらって、いないからです」
「そうでしょうね」
ミラゼの、こちらを見る視線が、一気に厳しいものになった。
当たり前だ。
ルトが何者なのか知らない人間が、ルトと一緒に旅をしていると言っても、信じられない。
私は今、ミラゼのなかで、得体の知れない人間のはずだ。
「…………………」
どうすれば、いいのだろう。
何を言っても、失敗する気がする。
だって私は、ルトに関する事をひとつも知らないのだから。
...沈黙が、続く。
ミラゼがルトをちら、と見る。
そして、その目が再びこちらへ移る。