月夜の翡翠と貴方
ミラゼは少しだけこちらに顔を近づけると、周りに聞こえないよう小さな声で言った。
「教えてあげましょうか、ルトがなにをしてるか」
どくん、と心臓の音がやけに大きく聞こえる。
「……え…」
眉を寄せた私の顔を見て、ミラゼは意味深な笑みを見せた。
「一緒に旅してるのに、職さえ知らないなんて、おかしいじゃない。これくらい教えたって、構わないでしょう」
「……………」
それは、そうだろう。
けれど、いいのだろうか。
ルトは、意図的に私に何も教えないのではないか。
なんだか、隠れて悪い事をしているように感じる。
それなのに、知りたいと思ってしまっている自分もいた。
...いけない。
『ルト』を知ってはいけない。
それなのに。
「………………………」
「何も言わないのは、肯定と受け取っていいのかしら?」
苦しくて、ミラゼから目を逸らす。