月夜の翡翠と貴方
頼むから起きて欲しい。
宿への道のりをどうするか、話はそれからなのだ。
「ルトーっ」
あれだけ騒がしかった酒場に、私の声だけが虚しく響く。
そこで、一階のアンティーク店へ繋がる階段から、カツン、と音がした。
…え。
少しだけ、ビク、としてしまう。
ここは、一階のアンティークの時計針の仕組みがわからないと入れない。
だから、不審な人間が入る心配はないのだが…
カツン、カツンと音が段々と大きくなる。
誰かがここに来ている。
一体誰だろうか。
今日来た人が、忘れ物でも取りに来たのだろうか。
カツン、と最後の一段を降り終え、そこにいたのは…
「…ジェイドさん」
「リロザさん…」
途中で、外へ出て行ってしまったリロザだった。
だいぶ酔いが覚めているのか、足取りもしっかりしている。