月夜の翡翠と貴方
「ルト、起きろ。お前の全体重が私にかかっているんだ。担いでやるから、少しでも自分で歩け」
「…………………」
ルトの目が、少しずつ開く。
「ルト、起きて。宿戻ろう」
「………………」
しかし、訴え虚しく、ルトはまたすぐに目を閉じてしまった。
「…………こいつ…」
リロザが、ルトの寝顔に避難の目を浴びせる。
「……すいません…」
謝ると、リロザは「いや、貴女は悪くないだろう」と言った。
「酒弱いくせに飲むからだ。こういうやつを馬鹿というのだ」
ふぅ、と溜息をつくと、リロザは静かに階段を上がりはじめた。
私もルトを支えながら、後ろからついていく。
「あの………リロザさん」
「なんだ」
控えめに呼ぶ。
今のリロザはなんだか機嫌があまりよくないのか、少し厳しい口調だ。