月夜の翡翠と貴方
「ずっとお聞きしたかったんですが」
「ああ」
「リロザさんは、何故高名な貴族家の方なのに、ルト達とあんなに仲がよろしいのですか」
ミラゼは、酒場はそういうものだと言った。
しかし、何とも不思議である。
全てを詳しく聞こうとは思わないが、教えてもらいたい。
リロザは「そうだな…」と呟くと、フ、と微かに笑った。
「確かに、初めて私達を見る者は、驚くだろうな。当たり前だ。だからな私も、ここへは家の者には秘密で、たまに来る程度だ」
こちらから見えるリロザの横顔は、暖かな笑みを浮かべていた。
「幼少の頃からの友人なのだ。ルトとは特にな。悔しいが、身分は違えどこいつはいい奴だ」
こんなときだから言えるのだがな、と笑うリロザ。
家の者に秘密にするほど、大切な繋がりということか。
「…いいですね。そういうの」
ルトの性格からして、きっとリロザをあの明るい笑顔で家から引っ張ってきたのではないか。