月夜の翡翠と貴方
そう思って、私は微かに笑った。
リロザはそれを見て、また前を向く。
そして、階段の最上段に足をつけると、頭上の扉を上に押した。
私がルトを押して、リロザも前に進む。
無事階段を上がり終えると、リロザはルトを床に下ろし、扉を閉めた。
カチッと音がする。
きっとこれでロックがかかり、時計針を動かすと、またロックが外れるようになっているのだろう。
すごい仕組みだな、と改めて感心していると、リロザが再びルトを担いだ。
そして、歩き始める。
私も、リロザの隣で歩く。
アンティーク店の扉を開けると、夜の外の冷たい風が店に入ってきた。
乱れる髪を押さえながら歩くと、ふとリロザが呟いた。
「…貴女は、本当に美しいな」
唐突な言葉に、驚く。
リロザの上品な言葉遣いのためか、まるで口説くような言い方にも聴こえた。