月夜の翡翠と貴方
「あ、ありがとうございます…」
「今日は再会早々あのようなことを言ってしまったが、嘘ではない。今日見た貴女の微笑みは、本当に美しかった」
リロザはさして照れる様子もなく、淡々と前を向き話す。
「…見惚れてしまったよ」
そしてこちらを見て、目を細めるリロザ。
...彼はやはり、貴族だな、と思った。
上品な言葉遣いもそうだが、やはり表情が穏やかで、美しい。
彼の顔立ちがもともと整っているのもあるのか、優しく微笑む姿は平民にはない花があり、素直に美しいと思った。
彼の金髪が、風に揺れる。
路地を抜け、大通りに出ると、昼間よりか幾分か人の通りが少なかった。
ほっと安心する。
あの人ごみのなかでルトを担いで歩くなんて、考えただけでも恐ろしい。
リロザが来てくれて、本当に助かったなと思った。