月夜の翡翠と貴方
「…………………」
目を背けたい答えが、脳裏にちらつく。
しかし、私はすぐにそれを振り払って、リロザを見上げ笑った。
「…なんとも思っていませんよ。あくまでルトとは友人です。お互い、そうとしか思ってません」
普段仏頂面のくせに、こういうときだけ私の顔は、いとも簡単に笑顔をつくる。
我ながら、器用なのか不器用なのかわからない。
「……………そうか」
そう言ったリロザの言葉で、この話は終わった。
それからは、他愛のない話をした。
リロザがルトや酒場のものとの思い出話をしたり、リロザの家自慢を聞いたり。
宿までの時間は、楽しいものになった。
*
「では、ありがとうございました」
「ああ」
宿に着き、宿の玄関でリロザと別れる。
「また会えたら、そのときはよろしく」
「はい」