月夜の翡翠と貴方
私は気を取り直し、心を落ち着かせた。
…辱めなんて、私はこれ以上のことを、今までに何度も経験している。
今更もう、気にしてはならない。
再びしっかりとした瞳を向けると、彼はため息をついた。
「頑固だね」
やれやれといった風に、青年はその場にトン、と座った。
そして、こちらをじっと見つめる。
そして。
「…君がフードをとって顔を見せてくれるまで、俺はここを動かない。もちろん、テントへも行かせない」
少し鋭くなった彼の視線が、私へ突き刺さった。
……冗談じゃない。
頑固だなんて、人に言えたものではないだろう。
なぜ、そこまでする必要が?
困惑する私を置いて、青年は淡々と喋り続ける。
「俺が昨日みたいに、無理やりとってもいいけど。それじゃ君にも悪いし、俺も気分が悪い。できれば、君が自らとって欲しいんだけど」