月夜の翡翠と貴方
リロザが叩き起こしたことで、ルトは私の肩につかまりながら、寝ているのか起きているのかわからないところを彷徨っているようだった。
去り際リロザは、「それと」と言ってこちらを振り返った。
「ルトに、もう酒は飲むなと言っておいてくれ」
その言葉に、私は少しだけ笑って「はい」と返事をした。
もう、リロザに対する警戒心はほとんどなくなっていた。
「お気をつけて」
リロザが去ると、私は宿の者に頼んで、部屋までルトを運んでもらった。
部屋につくと、あとはルトを引っ張って、寝台に下ろすだけ。
「…………………はぁ」
なんとか、無事宿についた。
全てリロザのお陰だ。
最初こそ高飛車な貴族としか見れなかったが、ルト達と仲良くやれているだけあって、普通の貴族とは違う。
印象が、だいぶ変わったな、と思った。
部屋の席に腰掛ける。
ルトを見ると、眠気に負けたのか、既に気持ち良さそうに寝ていた。