月夜の翡翠と貴方
翡翠葛。
このときの髪の美しさを見て、ジェイドと名付けたのだ。
その、白く美しい肌にそっと触れる。
いつ見ても、綺麗だと思った。
もう一緒に旅をして二週間近く経つというのに、この翡翠葛が何を考えているのか、全くわからない。
いつも無表情の仏頂面で、感情が読めないのに、ふとしたとき笑う。
最近は、だいぶ俺に慣れてくれたのか、よく笑うようになった。
とても嬉しいのだが、その笑顔を見る度に、要らない感情が顔を出すから、勘弁して欲しい。
要らない感情だ。
持ってはならない、感情だ。
「………………………」
ミラゼに会う前のことを思い出す。
なんで、あんなこと言ったのか。
じっと見てくるから、何かと思えば。
「……………あーーーーー」
ジェイドを起こさないよう、小さく唸る。
あの場でミラゼが来なければ、何を言っていたかわからない。
ジェイドは俺が何度呼んでも、こちらを見ようとはしなかったが。
たぶん、自分で言って後悔したんだろう。
なのに、俺はそれをわかって名前を呼んだ。
ジェイドがこちらを向いていたら、自分は何をしていただろう。何を言っていただろう。
...考えるだけで、嫌になる。