月夜の翡翠と貴方


何を考えてるんだ、俺は。


スジュナとラサバの件が解決した夜を思い出した。

はじめて見た、ジェイドの弱さだった。

...あんな表情も、するのだ。

橙の瞳に涙を溜めて、こちらを見つめて。

それは初めて会ったときにも見たけれど、あの時のジェイドとは違う、まるで俺にすがるような目をしていた。

それがどういう意味なのか、わかるようでわからない。


優しくするなというのはわかる。

けれど、それは性格上無理な話であり、俺自身が嫌なのだ。

優しくするなと言っているようで、助けを求めているようにも見えた。

今あの目を見たら、俺はもしかしたらそれに応えてしまうかもしれない。

...一定の距離を、保たなくてはならないのに。


「…………………」


埒が明かない考えを巡らす自分に、いらついてきた。


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