月夜の翡翠と貴方
もともと、こんなに考え込むのは性にあっていないのだ。
ふぅ、と一呼吸すると、ジェイドを椅子から起こして抱き上げる。
腕にかかる重量は相変わらず軽いけれど、これでもだいぶ太ったほうだ。
最初に会ったときは、まるで痩せ細っていて、触れたら壊してしまいそうだった。
抱き上げると、彼女の寝顔が真下に見える。
唇からは、規則正しい寝息が聞こえる。
そしてその唇が、唐突に言葉を紡いだ。
「……………ル、ト」
...小さく、か細い声で。
目を見開く俺に、抱きかかえられていることなど気づきもせず、ジェイドは眠り続ける。
「…………………」
…勘弁して欲しい。
どんな夢を見ているんだ。
何を考えてる。
何を思って、俺の笑顔が好き、なんて言ったのか。
考えれば考えるほど、『ジェイド』という存在に引き込まれるようで。
気づけば抱き上げたまま、顔を近づけていた。
あと少しで、唇と唇が触れる。