月夜の翡翠と貴方


青年は、目を瞑ったまま笑った。


「じゃあ、数えるよ」


私は、水が少し入ったバケツを持った。

中の水が、チャプン、と音を立てる。


それを合図のように、青年は数え始めた。


「…十五」


私は、早足で青年に近づいていく。

…大丈夫、大丈夫。

落ち着いて歩けば、大丈夫。


「十四…十三…十二」


彼の、真横を通ればいいだけだ。

「十一」

バケツの中の水が、またひとつ音を立てる。


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