月夜の翡翠と貴方
私は、奴隷なのだ。
死と紙一重で生きてきた。
ひたすらに逃げて走った事も、ナイフを持った事も、何度もある。
私には、生きることだけが希望なのだ。
なんとしてでも、生きてきたのだ。
「……………………」
しばらくルトは私を見つめていたが、やがて目を逸らし、呆れたように溜息をついた。
「意志が強いときの目は揺らがないな。…いいよ。受けるよ、リロザ」
「! い…いいのか」
「うん。けど俺も別の依頼の途中だからな。もしかしたらジェイドの身を優先するかもしれないけど、許せ」
「あ、ああ。それでも良い。すまないな、ふたりとも。…ジェイドさんも」
リロザが、こちらを見て申し訳なさそうな顔をする。
私は小さく、笑って返した。
ルトが言った、意志が強いときの…というのは、きっと初めて会った時のことを指しているのだろう。
あの時の、エルガの店から離れたくなかった、私の意志。
....覚えて、いたのか。